ゴールボールは「静寂の中の格闘技」とも呼ばれるスポーツですので、観客の皆様にも試合会場を静寂にしていただくご協力が必要になります。
そのポイントについてご紹介いたします。
はじめてのゴールボール(観戦マナー編)
知っておきたい観戦マナー
選手は、ボールに入った鈴の音とレフェリーのコール、笛を頼りにプレーします。また、相手チームの選手の声や息づかい、足音と聴き分けてディフェンスをします。そのため、試合は静寂の中でおこなわれます。
レフェリーが「クワイエット プリーズ!」(Quiet Please!)とコールしたら、「静かにしてください!」の合図です。ゴールが決まった時のレフェリーのコール後や、タイムアウト、選手交代の時などゲームが止まっているときは、音楽が流れますので、大きな応援を送ってください。
もしプレー中に音を出してしまったら・・・
オフィシャルタイムアウトがかかり、試合が中断してしまいます。その際に入ったゴールはノーカウントになり、レフェリーが観客に向けて静かにするようアナウンスした後に試合が再開します。何度注意しても騒ぐ観客は、退場させられた事例もあるので、ご注意ください。ロンドン大会では、赤ちゃんの泣き声で一時中断もありました。
観客席別の楽しみ方
サイドライン側から観戦する場合、ボールのスピード感がよくわかり、ゴールボールの迫力がより楽しめます。ゴール裏から観戦すると選手の動きや投げたボールのコースがよくわかり、より戦略的・戦術的な楽しみ方ができます。ゴールボールには、ホームとアウェイの区別はありません。敵と味方の区別なく一体となって楽しめます。
はじめてのゴールボール(競技紹介編)
ゴールボールの基礎知識
静寂の中の格闘技
ゴールボールという競技から格闘技というイメージはあまりわかないかもしれません。バスケットボールと同じ大きさで、バスケットボールの約2倍の重さ(1.25㎏)のボールが、男子のトップ選手では時速60~70kmの球速で飛んできます。そのボールを全身で止めてゴールを阻止します。たとえて言えば、ゴールボールはボクシングのパンチを全身で休みなく受けているのと同じなのです。
ポジションと役割
ゴールボールのポジションには、センターとウィングがあります。センターは守備の要であり、最もボールが飛んでくる守備機会が多いポジションです。センターからボールを両ウィングへ素早く展開し、攻撃につなげます。ライトとレフトに分かれるウィングは、相手に狙われやすいライン際とセンターを抜けてきたボールを確実に止めることが求められます。一般的にはウィングは攻撃的なプレーヤーとして、速攻や移動攻撃、ウィング同士の連携プレーなど多様な攻撃を行います。
試合観戦の注目ポイント
ゴールボールの試合でぜひ注目して観戦してほしいポイントがあります。
攻撃面
攻撃は、野球のバッターとピッチャーの駆け引きにも似ていて、サイドに投げて相手の意識をサイドに集中させておいてセンターで勝負する、緩急を使う、バウンドの高低を使うなどの駆け引きがおこなわれています。ライン際や選手同士の間、キャッチしにくい手先や足先を狙ってボールを投げます。
基本的な投げ方は、ボウリングのように助走をつけた投げ方です。助走の方向とボールの軌跡に角度をつけて、相手の予測の逆を突くこともあります。特徴的な投げ方に「回転投げ」があります。助走でスピードをつける代わりに体の回転でボールに力を伝える投げ方です。基本的な投げ方に比べて、鈴の音が消えるためどこにボールが飛んでくるか分かりにくく守備がしにくい投げ方です。海外には、世界的にも珍しい、相手にお尻を向けて股の下から両手でボールを投げる選手もいます。
「グラウンダー」(転がるボール)「バウンド」(弾むボール)「カーブ」(曲がるボール)などの球種がありますが、バウンドの軌道や回転力の異なる球種を投げ分けることで守備の姿勢やタイミングを崩すことができます。ボールに強い縦回転をかけることで、勢いのある小さいバウンドボールになり、相手がはじきやすくなります。縦回転に加え、地面にたたきつけて投げると、高いバウンドになります。
ゴールボールは、ボールが体に触れてから10秒以内にセンターラインやサイドラインを越える攻撃をしなくてはならないルールがあります。その10秒間の使い方も戦略・戦術のひとつになります。また、フェイントや味方へのフィードバックなど、投げていない選手がどのように攻撃に絡み、3人が連携して攻撃を組み立ているかにも注目してみてください。
守備面
守備には、ギリギリまで音を聞いてから飛びつく瞬発力や体に当てたボールを弾かない身体能力、守備範囲の広さ、連携したカバーリング、ボールや相手選手の出す音を聞くサーチ力が求められます。
守備の陣形(シフト)はセンターだけが前進守備をする「三角形」や横一列に並ぶ「一文字」などがあります。「三角形」は3人のラインをずらすためバウンドボールに対応しやすいシフトですが、3人の間のスペースを抜かれるリスクがあります。「一文字」は日本代表チームが世界で初めてアテネパラリンピックの最終予選で採用したと言われるシフトで、身長の小さい日本が世界と戦うために考案されました。3人がゴールから3m前に出て横一列で守備をすることで、ゴールに対する守備範囲を狭くできます。声を掛け合いボールの位置をサーチしてチーム全員が連携して守備ができれば、3人の隙間が空きにくくスピードボールに強いシフトになります。相手の球質に合わせてラインの上げ下げをコントロールしています。
どのようなシフトで守ろうとしているのか、3人が連携して隙間を空けずにシフトをとれているか、ボールを弾いた後の声掛け・チームワーク、守備から攻撃の展開の速さなどを、ぜひ観戦のポイントにしてみてください。
音の駆け引き
アテネパラリンピック以来、ボールの出どころに対しシフトをとって大きく動いてくる守り方が主流になっています。音でフェイントやかく乱し、シフトの空いている側(守れていない側)に回り込んだり、3人の守備シフトに隙間をつくる(シフトをちぎる)駆け引きを行って、得点を狙います。また、アウトボールやタイムアウト後などの3人がフェイントなどで攻撃に絡むサインプレーも見逃せないポイントです。
ぜひ迫力あるゴールボールを見に来てください。